効果的な学習法: 知識を定式化する20個のルール (9/20)

(This is a translation of "Effective learning: Twenty rules of formulating knowledge" by Dr Piotr Wozniak)

9. 集合を避けよ

集合とは物が集まったものです。例えば、果物の集合の一例は { リンゴ、梨、桃 } です。集合の要素をすべて答えよ という問題は、学習しづらい問題の典型例です。例: EUに加盟している国は? このような問題は可能な限り避けるべきです。記憶を維持するためのコストが高いからです。集合がどうしても必要なときは、その問題を 列挙 に変換してください。列挙とは、要素が順序づけられて並んだものです (例: EU加盟国のアルファベット順一覧)。列挙も 覚えやすいとはいえないので 避けるほうがいいです。それでも列挙は集合よりも良いです。なぜなら列挙は 常に同じ順序で脳から取り出されるからです。国の集合は順不同です。いっぽう国を順序づけて一覧にした場合、より多くの情報を持つことになります。矛盾するようですが、情報が増えたにもかかわらず、列挙のほうが覚えやすいのです。その理由は 最小情報原則 のところで論じたことです: 脳の動き方は復習のたびに一定であるべきなのです。 集合の場合、復習のたびに異なる順序で要素を並べてもよいので、記憶に対して破滅的な悪影響を与えます。記憶術・列挙・グループ化といったテクニックを使わないかぎり、5つより多くの要素をもつ集合を記憶することは ほぼ不可能です。この主張にもかかわらず、あなたは無意識のうちに身につけたテクニックを使って、集合を記憶することに成功するかもしれません。しかし、そのようなテクニックは ひんぱんに失敗します。したがって: 集合を避けよ! もし どうしても必要なら、集合を列挙に変換し、列挙を記憶するためのテクニックを使ってください。

うまく定式化されていない知識 - 集合は良くない!

Q: EUの加盟国 (2002年時点) は?
A: オーストリア、ベルギー、デンマークフィンランド、フランス、ドイツ、ギリシャアイルランド、イタリア、ルクセンブルク、オランダ、ポルトガル、スペイン、スウェーデン、イギリス


うまく定式化された知識 - 集合を変換し、意味のあるリストにした

Q: 1951年、欧州防衛共同体の創設を目指して主体となった国は?
A: フランス


Q: 1952年、ヨーロッパ石炭鉄鋼共同体に参加した国は? (フランス以外)
A: ドイツ、イタリア、ベネルクス3国


Q: ベネルクス3国とは?
A: ベルギー、ルクセンブルク、オランダ


Q: 1960年代、ある国が欧州経済共同体に加盟しようとしたが、フランスのシャルル・ド・ゴール大統領に反対された。その国とは?
A: イギリス


Q: 1973年、イギリスとともに欧州経済共同体に加盟した国は?
A: アイルランドデンマーク


Q: 1981年に欧州経済共同体に加盟した国は?
A: ギリシャ


Q: 1986年に欧州経済共同体に加盟した国は?
A: スペイン、ポルトガル


Q: 1995年にEUに加盟した国は?
A: オーストリアスウェーデンフィンランド


Q: EU加盟国の広がりを時系列で並べると?
A: (1)フランス (2)ドイツ、イタリア、ベネルクス3国 (3)イギリス (4)アイルランドデンマーク (5)ギリシャ (6)スペイン、ポルトガル (7)オーストリアスウェーデンフィンランド



上の例で、15個の要素をもつ集合を 9個の問題に分けました。そのうち 5問は 2〜3要素の集合で、1問は 7要素の列挙です。問題をSuperMemoに入力し、EU加盟国を時系列順に思い出すことがどれほど簡単になるか、体験してください! フランスとイギリスに対して使ったトリックに注目してください。この2国は他の国といっしょに加盟しましたが、学習プロセスを簡単にするために、独立した問題を作りました。また、もとの集合と比べて、うまく定式化された知識のほうが多くの情報を含むことにも注目してください。おかげで、シンプルであることに加えて、いくつかの役立つ知識を得られました。すべての問題は最小情報原則に従っています! 最後の問題 (7要素の列挙) に使ったのと同じテクニックを使って、集合 { ドイツ、イタリア、ベネルクス3国 } をさらに分割することもできます。しかし、そこまで細かく分割するのは、そのような小さい集合を記憶するのが本当に難しいと感じたときだけにしてください。