賃貸住宅の修理費用 (契約書に書かれていない設備の故障)

役所がやっている無料の法律相談で、弁護士に相談してきた。


A = 貸し主。家主。
B = 借り主。入居者。


A が所有する家を、B が賃貸契約で借りた。
契約時、家のトイレには便座暖房機能・洗浄機能がある便座 (ウォシュレット) が備え付けられていた。
その後、便座の暖房機能が故障した (実は最初から壊れていたことが後で判明)。
この機種はかなり古いので、メーカーの部品保存期間を過ぎており、修理は不可能である。
B は A に、暖房機能・洗浄機能を備えた同等品への交換を、A が費用を負担して行うことを要請した。


しかし A は以下の主張により、A の負担による交換を拒否した。

  • 便座は契約書に書かれていない。
  • 便座は設備として貸していない。
  • 便座は A の好意で置き土産したのであり、修理する義務はない。
  • 便座の暖房機能がなくても生活に支障はない。
  • 暖房機能は以前から壊れていた。A がその家に住んでいたときは、便座カバーをつけて寒さを防いでいた。だから我慢しろ。
  • ふつうの賃貸アパート/マンションにはウォシュレットはついていないものだ。
  • 暖房機能のみ・洗浄機能なしの安い機種になら、A 負担で交換してやってもいい。暖房・洗浄の両方を備えた機種は高すぎる。


B は弁護士に相談した。弁護士の回答は以下のようなものだった。

  • A は便座の修理義務がある (民法606条)。修理が不可能なら同等品への交換義務がある。
  • たとえ契約書に書かれていない部品であっても、契約時に家に取り付けられていたものについて、家主 A に修理義務がある。
  • A が費用を負担しないなら、B が費用を立て替えて交換し、家賃からその費用を減じることができる。
    • しかし勝手にやるとトラブルのもとなので、しっかり内容証明郵便で「○月○日までにA負担で交換せよ、さもなくばBが立て替えて交換し、その費用を家賃から相殺する。」と送ること。


その他、弁護士から得られた情報は

  • よくある手順は、内容証明郵便で要求→それでもダメなら調停→それでもダメなら訴訟、の流れ。
  • 本件では B が借りている家は横浜にあり、 A は九州に住んでいる。調停は被告の住所の裁判所でやるので、調停は旅費がかさむので困難。
  • 訴訟なら裁判所の選択が広がる。A の住所の裁判所が原則だが、契約履行地である横浜の裁判所で行ってよい。その選択権は原告 B にある。
  • このくらいの訴訟なら、低額かつ明解なので、弁護士を使わずに自力で訴訟を行うのを勧める。
  • 裁判所にはよくあるタイプの訴状のテンプレが用意されている。空欄を埋め、選択肢にチェックを入れるだけで訴状が完成する。


ということなので、賃貸アパート・マンション・借家に住んでいる人は、最初から家にあった設備の故障について、どんどん貸し主に要求しましょう。
もちろん、入居者が故意や過失で積極的に壊した場合や、電球などの消耗品は、さすがに入居者負担でしょうが…。
まともな住宅会社が管理する物件なら、ちゃんと修理してくれるでしょう。今回、私が借りている家は、住宅会社ではなく個人が所有する家で、家主が無知でケチだったためにこんな面倒なことになったのですが。