何かを売って金儲けをしたいなら

これが◯個売れたら粗利がいくらで…といった「獲らぬ狸の皮算用」よりも、まずは、お客様に買っていただくことを考えなくてはいけない。


数年前の本だが「コンピュータは難しくて使えない」という本がある。コンピュータソフトウェアのユーザインタフェース (操作方法) を設計するコツが書かれた本だが、「ユーザに名前をつけ、性別・年齢などを設定し、「ボブのためにはどんな操作方法がいいだろう」と考えよ」という方法が紹介されていた。これを応用して、架空のお客様のキャラクタを作り、彼/彼女がその商品を買うまでの流れ、買った後の気持ちをシミュレートする、という手法が考えられる。


では作ろう。性別・年齢、そして「名前」を決めるのも忘れてはいけない…リアルな名前をつけると、思考実験がより生々しくできる。
学歴 (学科)、職業、収入、住居、家族構成、交友関係、趣味、健康状態。
平日 (仕事/学校がある日) の1日の生活は? 休日 (仕事/学校がない日) は1日なにをしている?

これらを設定すれば、彼/彼女の毎日の生活をありありと想像できるようになるだろう。


次に、彼/彼女の生活パターンの中に、いかにして商品を入り込ませるかを考える。
彼/彼女は、いつ、どのメディアから、その商品の存在を知ることになるだろう?
彼/彼女は、どのようにして、その商品についてもっと知りたいと思うようになるのだろう?
彼/彼女は、どのような思考を経て、その商品は自分にとって価格以上の機能性があると判断し、買うことになるのだろう?
彼/彼女は、その商品を買ったあと、どのように生活が変わるだろう?
商品が届いた後、彼/彼女は、商品を実際に使ってみてどう思うだろう? もう一度同じメーカーのものを買いたいと思ってくれるだろうか。


キャラクタを設定し、架空のお客様が商品に興味を持ち、金を払い、使って感想を持つ、というところまで考えた。
次にそのストーリーを、作家の立場ではなく「批判的な読者」の視点で読んでみよう。
設定に無理がないか? そんな人物はとても珍しい境遇じゃないか?
彼/彼女の性格・能力からして、そのメディアから商品を知るのは無理じゃないか?
彼/彼女の性格・能力を考えると、商品を買うまでの思考プロセスが (作家にとって) ご都合主義じゃないか?

もし、商品が売れるまでのストーリーに読者からツッコミが入るようなら、どこかに無理があるってことだ。そのような商品を売るのは困難だ。
ストーリーに無理がなくなるまで、商品の設計思想を変更したり、人物の設定を変更したりする。
批判的な目で見ても、ストーリーに無理がなくなれば、その商品は売れる「かもしれない」